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ヒューマンデザイン・アナリスト 市川丈夫のBlog

「生きづらさからの脱却」に読む価値低減傾向(マウンティング)

生きづらさからの脱却: アドラーに学ぶ (筑摩選書)

生きづらさからの脱却: アドラーに学ぶ (筑摩選書)

 

「生きづらさからの脱却」を読了。「嫌われる勇気」以降、雨後の筍の如くアドラー心理学本が続々出版されていますが、やはり岸見一郎氏の語り口は特別な気がしますね。

本書で気になったのは、虚栄心に満ちた人に見られる「価値低減傾向」です。優越感を持とうとするあまり、他人の価値を貶める発言や行為をする……いわゆるマウンティングですな。相手をケナすことで自分の価値を上げようとするものの、実際には相手をケナしたところでその人の価値が上がるわけではないんですよね。ところが本人はそのことに気づいていないため、必死にそれを繰り返すわけです。

先日翻訳したヒューマンデザインの講義録「愛のゲート The Love Gates」でも、このマウンティングをやってしまいがちな個性が出てきました。その根底にあるのは「家族や仲間を失いたくない」という恐怖があるんだとか。

つまり、優越感を持ちたい人は、家族や仲間の間で価値ある人間だと思われたいのです。そして自分に価値が無ければ家族や仲間が離れてしまう、という恐怖を抱えています。そのため家族や仲間が離れていかないよう、自分にそれだけの価値があると思わせたいのです。しかし自分にそれほどの価値があると証明できないなら、家族や仲間の価値を下げればいい……というNot-Self(自分らしくない状態)に陥るのだとか。

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たとえば会社勤めの旦那さんが、奥さんに向かって「お前は楽でいいよな、専業主婦で」と言う。これも価値低減傾向であり、マウンティングです。主婦業の価値を貶める行為です。でも実際には、主婦業も大変ですし、価値ある仕事です。ご飯を作り、洗濯をし、子供の世話をし、それを毎日繰り返す。飽きないように献立を毎日変えたり、安くて美味しい食材が買えるお店を探したり、アイロンがけの技術を学んだり……それを「楽でいいよな」と言う旦那さんに限って、洗濯機の動かし方も知らないし、おしめの替え方も分からない。料理も何ひとつ作れなかったりするわけです。

しかし奥さんの価値を認めてしまっては、自分の価値が示せない。だから主婦業の価値を下げようとする。外に働きに出ている俺の方が偉いんだ、価値があるんだ、と言うわけです。でも実際それは「お前には価値が無いんだから、俺と別れたら生きていけないぞ」という洗脳であり、その根底に「頼むから俺と別れないでくれ」という恐怖がある。

ですからマウンティングしてくる人……いつも誰かをケナしている人を見かけたら、ああこの人、自分を認めてほしいんだな、でも自分の価値をそれ以外の方法で示せないんだな、と冷静な目で観察してみてください。そしてその心の奥には、家族や仲間を失いたくないという恐怖があることも。

来年1月22日の「愛のゲート The Love Gates」特別講義でも、そのような表裏一体の愛憎をご紹介していく予定です。専業主婦の皆様も、是非ご参加ください(^_^)