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ヒューマンデザイン・アナリスト 市川丈夫のBlog

【ヒューマンデザイン】「何者かになりたい」問題

精神科医・熊代亨氏の「何者かになりたい」を読了。 自分という存在が不確かな人たちが、自分というものを確立しようとして、何者かになろうとすることを「何者問題」と称して解説した一冊です。この「何者問題」にとらわれてしまうと、何かしらの肩書きを得ようとしたり、集団とつながることで何かしらの属性を得ようとするわけです。しかしそれだけで「アイデンティティ=自分の中核となる自分らしさ」が確立されるわけではない……というお話です。

ヒューマンデザインでは、世の中の50%の人はアイデンティティが安定しており、残り50%はそれが不安定だとしています。僕は安定している方なので、この「何者かになりたい」感覚って無いんですよ。もちろん若い頃、小説家を目指して頑張っていた時期もありますが、それは承認欲求とか、作家の肩書きが欲しかったわけじゃないんですよ。すでに作家の肩書きが無くても問題ありませんし、ただ単に子供の頃から本を読むのが好きで、小学生の頃からノートに物語を書き始め、大学生の時は書店でアルバイトをし、卒業後は書店と出版社に勤務し……という、単なる本好きが講じて、小説だけ書いて暮らせたらいいなあという感覚でした。その「ずっと本が好き」ということこそ、僕の一貫したアイデンティティなんでしょうね。今もヒューマンデザイン書籍の翻訳に携わっていますし、本が無かったら僕じゃないという。でも周囲の人から見たら『えっ、本ってそんなに大事?』と思われるでしょうが、いやそれが大事なんだと。結局アイデンティティって、本人にとっては大事なものですが、他人から見れば、その程度のものです。でもそれを大切するのが、僕なんだと。

しかしアイデンティティが不安定な人は、『これが私だ』『これが無くなったら私じゃない』という感覚が不確かなんですよ。安定している人は、興味のあるものがハッキリしていますし、その枠内で仕事や趣味を見つけていきます。しかし不安定な人は、好みの枠が無いため、なんにでも興味がある一方、なんにも興味が無いように感じます。そのため就職したり、趣味を始めようとする時、何を選べば良いのか、漠然とするんですね。

アイデンティティが不安定な人は、職歴に一貫性が無いこともままあります。IT企業に勤めた後、保育園の先生をやって、農業をする、みたいな感じですよ。でもそれで良いと思います。それがその人独特の経歴を作っていくし、逆にアイデンティティが固定された人は、枠内でしか生きられず、そのような自由な方向性は無いでしょう。不安定で一貫性が無いからといって、それが悪いことではないのです。

ただどうしても、不安定な人は不健康(Not Self)になりやすいのは事実です。それが本書で言うところの「何者問題」であり、ヒューマンデザインでは「一貫性を持とうとする」「自分探しを始める」「肩書きに固執する」としています。いったん肩書きや属性を持ってしまうと、ようやく自分のアイデンティティを見いだしたと思い込み、肩書きと自分を一緒くた(同一視=Identify)にしてしまいます。そうすると『俺は東大卒だぞ』とか『私は港区女子よ』と言いたいがために、その肩書きや属性(キャラクター性)を必死に獲得しようとしたり、それを得た後、必死にそれにしがみついてしまいます。その肩書きや属性が無くなったら、自分が無くなってしまうような感覚なんですかね。

また、アイデンティティが不安定な人は、固定されたアイデンティティの人に影響され、相手や集団の好みに染まってしまいます。よく言えば『あなた色に染まります』ですが、悪くすると、不良とつき合ったら不良になってしまう人なので注意しましょう。

アイデンティティは不安定でも、それを健康的に活かせれば、他人の方向性や、周囲の人間環境に対して非常に敏感になれます。それも『なんとなく嫌』『なんとなく好き』という、ぼんやりした感覚かもしれませんが、実はその感覚が、その人のアイデンティティなのです。不確かだけれど、なんとなく好みがあるはずです。それがなかなか見えないからこそ迷うのですが、時間をかけていけば『これが私だ』『これが無くなったら私じゃない』という健康的なアイデンティティが感じられるのではないでしょうか。

 

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